原爆症認定集団訴訟 東京地裁が判決 
5たび、国の認定制度を断罪! 認定制度を抜本的に改善せよ 

 原爆症認定申請の却下の取り消しを求めた東京の集団訴訟の判決が3月22日、東京地裁でおこなわれ、原告30人のうち21人を原爆症と認めて国に対して却下取り消しを言い渡しました。これで司法の場で集団訴訟でも5回連続、国の認定制度を断罪したことになります。
原爆症として認定しない政府の態度を断罪

  東京地裁の判決は、厚労省の審査基準である放射線量評価(DS86)や原因確率を批判し、これらの値が低いことを理由に放射性起因生を否定すべきでないときびしく批判し、原告の主張を認めたものです。
 大阪、広島、名古屋、仙台につづいて五度、国の認定制度のあり方をきびしく批判したことになります。
 そのいっぽう、原告九人に対しては病気と放射線の影響の因果関係を否定して請求を認めませんでした。
 原告団団長の山本英典さんは「国は裁判を続けるのでなく認定制度を改善すべきだ」と述べました。
 判決後、被爆者、支援団体は厚労省や各政党に対して「国は控訴をやめよ。認定基準を抜本的に改めよ、早期に政治的解決をはかれ」などと要請しました。
 また東京四谷で報告集会(写真右)を開催。女優の斉藤とも子さん、歌手の横井久美子さん、超党派の国会議員もかけつけ、国に控訴を断念させ、国の認定制度を抜本的に改善させようなどの決意を固めあいました。




 
政府と厚生労働省は控訴を取り下げ
被爆者施策・行政を根本的に改めよ!
これ以上、被爆者裁判を長期化するな!
この声を政府などに届けよう!
厚生労働大臣殿 FAX03-3502-3090
E-Mail:www-admin@mhlw/go.jp`
法務大臣殿 FAX03-3592-7393
E-Mail:webmaster@moj.go.jp
内閣総理大臣殿 FAX03-3581-3883


被爆者と国民の声が国には届かないのか
不当にも国が控訴

   厚生労働省は三月三十日、原爆症認定集団訴訟で敗訴した仙台、東京両地裁判決を不服として、敗訴部分について高裁にした。仙台、東京両地裁判決は、同省の機械的な原爆症認定のあり方を明確に批判。すでにこれまで集団訴訟の五つの地裁で厚生労働省の機械的な認定制度がきびしく断罪され司法の場では明快な決着がついている問題です。ところが厚労省は判決は「医学や放射線学の一般理解と異なる」として不当にも控訴したもので、「控訴するな」の被爆者や国民世論に背を向ける不当なものです。
 被爆者は、不当な控訴に抗議し、認定制度の抜本的改善と同訴訟の一括解決を求めて連日行動をつづけています。
 東京の厚生労働省前では、連日座り込みがつづけられ、また日本被団協の呼び掛けに応えて全国でも被爆者や支援者による行動が展開されています。




 

原爆症認定集団訴訟東京地裁判決についての声明  07.3.22
原爆症認定集団訴訟東京原告団 原爆症認定集団訴訟東京弁護団
原爆症認定集団訴訟全国弁護団連絡会 東京都原爆被害者団体協議会(東友会)
日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)原爆裁判の勝利をめざす東京の会


 東京地方裁判所民事第3部(鶴岡稔彦裁判長)は、本日、原告ら30名中入市・遠距離被爆者を含む21名について、厚生労働大臣の原爆症認定申請却下処分を取り消す、原告勝訴の判決を言い渡した。

2 判決は、厚生労働省が「科学的」と称して、2001年以降用いてきたDS86や原因確率論を柱とする「審査の方針」について、
(1) 線量推定方式であるDS86、DS02は、「評価結果に限界があり計算値を超える被爆が生じている可能性がないと断定してしまうことはできない」、「急性症状等が生じていると認められる事例が存在するのであれば、その事実を直視すべきであって、それがDS86による線量評価の結果と矛盾するからといってDS86の評価こそが正しいと断定することはできない」、
(2) 残留放射能、放射性降下物、誘導放射能については、「広島原爆、長崎原爆とも、誘導放射能及び放射性降下物について十分な実測値が得られていない。」、内部被曝について、「ガンマ線及び中性子線以外に、アルファ線及びベータ線が影響すること、外部被爆と比べ至近距離からの被曝となり人体への影響が大きいことを理論的に否定し去ることができない」、
(3) 原因確率論の合理性については、「原因確率に基づく判断にも一定の限界があることは否定できないのであるから、特に、原因確率が低いとされた事例に関しては、これを機械的に当てはめて放射線起因性を否定してしまうことは相当ではなく、個々の被爆者の個別的事情を踏まえた判断をする必要がある」、
(4) 放射線起因性の判断手法について、「科学的知見にも一定の限界が存するのであるから、科学的根拠の存在を余りに厳密に求めることは、被爆者の救済を目的とする法の趣旨に沿わない」、
 との判断を示し、これまでの厚生労働省の認定行政が、原爆被害の実態を正しく反映せず、法の趣旨に反するものであることを明確に認めた。

3 一方、判決は9名の原告について、その請求を棄却した。裁判所の認定は、被爆地点、入市の日時や、急性症状の存否等の原告側主張を、事実認定においてこれを斥けたものであり、その点はきわめて不当であり到底納得できない。

4 国の原爆症認定行政の誤りは、これまでも、最高裁、大阪高裁、東京高裁をはじめ、全国11の裁判所で厳しく指摘されてきた。ところが、国は司法判断を無視し、不毛の「科学論争」を蒸し返すだけで、自らの認定基準を改めようとしなかった。そして、この間、認定すべき多数の被爆者を切り捨ててきた。

5 私たちは、今こそ次のことを直ちに実現するよう強く求める。
(1)国は裁判所の判断を尊重し、控訴を断念せよ。
(2)現在の審査の方針を根本的に改め、被爆者を早期に救済せよ。
(3)厚生労働大臣は、被爆者の意見を聞くための協議の場を設定せよ。

              以上