第19回総会記念講演
 
映画「草の乱」を制作して  神山征二郎映画監督が記念講演
 東京各政府の会第19回総会は、2004年12月4日都内で開催しました。総会に先だって、映画監督の神山征二郎氏が「映画『草の乱』を制作して」と題して記念講演をおこない、参加者に大きな感銘を与えましたその大意を紹介します。
 

神山氏は、核兵器と平和の問題では専門外ですし、皆さんの方
が見識が高い人ばかり、そこで映画「草の乱」をつくった四方山話をしたいと参加者の笑いを誘いながら話をすすめました。

チェルノブイリ原発事故のこと
 
 最初に「核」に関するエピソードとして、一九八六年に起きたチェルノブイリ原発事故に係わる自らの体験を話しました。事故の一週間後、タシケント映画祭(タシケント=ウズベキスタン共和国の首都)に「春駒のうた」を出品するために、主演の田村高広さんらとモスクワに立ち寄った際、街に出たら雨が降ってきたので日本から来たわれわれはあわてて一斉に建物の中に身を隠したが、現地の人は平然としてそのまま雨に濡れていたと紹介し、被爆の恐ろしさを知っている日本人とそうでない現地の人たちの認識の違いを痛切に感じたと語りました。
 映画で被爆問題を取り上げたのは、幼くして被爆した少女・佐々木禎子さんの短い青春を描いた映画「千羽づる」(一九八九年)を手がけたの初めだったとのべました。

イラク攻撃と秩父事件当時の
軍国主義のやり方は似ている

 そして神山氏は、「草の乱」を作成するに当たって日本の歴史を改めて読み直したが、今のイラク戦争でアメリカがやっていることは、朝鮮併合を強引にすすめた当時の日本軍国主義のやり方に瓜二つだったと指摘。秩父事件は「とても二時間足らずの物語では描ききれない、奥の深い事件」だが、映画では「どういう時期に、何が原因で、どういう風に思って決起したのか」を誰が観てもわかるように出来るだけかみくだいて制作したと語りました。

農民のもつ力

 神山氏は、黒船来航から明治十〇年の西南戦争、同十四年の政変、明治十六年の世界大不況など、秩父事件の時代背景にふれながら、明治への時代変わりのなかで伊藤博文らが、欧米から「資本主義のやり方」「教育」「戦争の仕方」、とりわけ「帝国主義のやり方」を学び、帝国主義の要は「軍事力」であり、そのために「増税政策」が必要だとして、帝国主義的道を歩みはじめたことが秩父事件を生んだと述べました。
 また神山氏は、当時の農民も、私有財産である土地をもっており、土地ももたない、いわゆる「水飲み百姓」は、わずかだったとのべ、「とれるところから徹底して税金をとる」という政策は土地をもつ農民を直撃したことを指摘しました。また、自らも岐阜県の農家の次男坊としてうまれ、農家育ちの祖母の生活の姿を紹介しながら、一般的な農民観とちがって「農民は大した力を持っている」とのべ、これが、映画「郡上一揆」を作成した思いでもあったと語りました。
 


また、映画制作で初めて韓国を訪問したことを契機に、出身地の村史を調べたら大陸からの集団移民の村だったことがわかったことなどを、訪韓やプロ野球選手との交流のエピソードなどを交えながら紹介しました。

小泉氏は国民騙す「ペテン師」の顔
 
 続いて神山氏は、小泉政権がすすめている危険な動きに言及。自らの経験と様々な事例を織り交ぜながらこうした危険な動きと闘うことの重要性に話しをすすめました。
 そのなかで四年間かけて制作した「郡上一揆」を発表したのがちょうど小泉政権の発足と重なり、「ちょっと心配だったが五〇万の人が観てくれた」とのべました。神山氏は、映画を作るようになってから「人の顔を観察する
ようになった」こと、かつてペテン師の映画の制作を考え、ペテン師の研究をおこなったなどとのべて、会場を笑わせながら、小泉氏の顔はまさに、ペテン師の顔だと指摘。「自分自身をだまさないとペテン師になれない。国民を苦しめていると思っていない小泉氏はそのたぐい」だとのべました。また政権発足時は小泉人気は非常に高かったがその当時から、「あの人は嘘つき、典型的なペテン師だ」と言ってきたことを紹介。彼が「イラクに自衛隊を派遣することに意義がある。自衛隊がいるから非戦闘地域」など言い逃れするのはペテン師だから出来ることだと批判しました。

憲法改悪の動き

 いま、憲法改悪の動きが強まっている。主権在民さえ覆そうとする動きもある。秩父事件で描きたかったのは、闘うということである。「豊かさと幸せを求める人間の共通の目的」を妨げることにはたたかわなくてはならないと強調しました。中には映画「草の乱」をとらえて、「神山さんは暴力肯定ですか」と心配して聞く方もいるが、「草の乱」は暴力肯定でなく、なぜ農民たちが闘いに立ち上がらざるをえなかったかということを最小限描いたつもりだと語りました。


マスコミの異常さ
闘うことの大切さ

 いま全国各地で開催されている「憲法9条の会」講演会に多くの人たちが参加していることに言及しながら、こうした動きを全く報道しないマスコミの異常さ、にふれました。その中で井上ひさし氏が「マスコミは敗北するだろう」と語ったが、これはたたかう人の言葉だと紹介し、こうした逆流を防ぐ流れ、そうさせてはならないという流れを怒濤の流れにする必要があると強調しました。


憲法9条を世界に広げよう

 それが出来るのが皆さんを含めて私達しか出来ないこと、憲法9条を日本国内にとどまらず世界に広げることが大事だと話しました。
 最後に神山氏は、各地で上演されている「草の乱」のエンドマークが出るとどの劇場でも期せずして拍手が自然にでることを紹介し、これは監督である私への拍手ではなく「たたかった秩父困民党」への共感の拍手だと結んで講演を終わりました。