氏家 祥夫さん
(元都庁職委員長)
都民要求は切捨て、都市再生予算は突出
公共サービス切捨てるNPM型リストラ
都政が民間の食い物にされる!市場化テストの導入
すべての福祉施設を民間に放り出す!
横田基地をめぐる危険な動き
都政の転換へ 都民的共同を
 
2月度の常任世話人会では、氏家祥夫氏(元都庁職委員長)に話題提供として「2006年度東京都予算案と石原都政をめぐる問題」と題してお話をしていただきました。お話は、都政の現状を生々しく告発するなど衝撃的な内容でしたが、紙面の関係でその大意を紹介します。
東京非核政府の会ニュース 222号 06.3.20付掲載
都民要求は切り捨て
都市再生予算は突出


 氏家氏は東京都の二〇〇六年度予算案では、小泉「構造改革」で大もうけした大企業の税収増や〇五年度最終補正による増収分などで約五七〇〇億円の増収が見込まれており、これを都民施策に向ければ相当の施策の実現は可能だと指摘。しかし石原都政は都民の要求には背を向け、増収分はオリンピック招致への積立金や「隠れ借金」返済などに振り向けている。そのため都民向けに予算の「目玉」も打ちだせないでいるが、都民にとっては重大な内容であると指摘。本来国の事業である中央環状線建設に都が二分の一を負担するなど、大型事業の「都市再生」関連予算は満額回答で突出させ、そのいっぽうで都民施策をきりすてる内容をくわしく紹介しました。また石原都政が福祉保健局予算が二八九億円増加したことをあげて「福祉は削っていない」と弁明している問題にふれ、国の「三位一体」政策によって東京都が措置しなければならない予算などで数字的には増額になったものだが実質的な福祉予算はマイナスになっていると批判しました。

公共サービス切捨てるNPM型リストラ!

 また、氏家氏は東京都が推進しているNPM型(ニュー・パブリック・マネージメント=新しい公共の経営)リストラについて話をすすめ、この手法は、民間に委託した事業の責任範囲はあくまで自治体がもっていた民間委託と違い、事業そのものが自治体から離れてしまう「民営化」であると指摘。すでに都民のための多くの施設が民営化や廃止され、さらに推進されようとしている実態をくわしく紹介しました。その例として@児童・障害・老人施設の民間委譲。A民間企業の資金で府中病院や駒込病院などを建設し、東京都の監視下とはいえその運営の大半を民間にまかせるPFI方式=プライベート・ファインス方式の導入。B都道府県、区市町村がやっている保育所、図書館、公民館などの公の施設を民間に運営させる「指定管理者制度」の導入の実態などをあげました。また、都の職員定数にふれた氏家氏は、石原都政の七年間で実質一万四千人近くが削減され、石原都政発足寺はほぼ同数だった知事部局定数と警視庁定数が、現在では知事部局約二万八千人にたいし、警視庁の定数は約四万五千人になっていて、「警察都政」といわれるほどだと述べました。

 
都政が民間のくいも のにされる!
 市場化テストの導入


 また氏家氏は、最近の石原都政の動向に言及。都道府県を解体する道州制の導入にかかわる東京都の動向にふれたあと、今回の通常国会に提案されている「市場化テスト」(官民競争入札)の危険な動きについて述べました。その中で氏家氏は、いままでの行政の「効率化」やリストラはいわば一本釣りのやり方だったが、「市場化テスト」は、これまで「官」が独占してきた「公共サービス」について、「官」と「民」が対等な立場で競争入札に参加し、価格・質の両面で最も優れた者が、そのサービスの提供を担っていくこととする制度で、トロール船の底引き網のように行政の仕事を民間がもっていってしまうやり方だと批判。これまでの民営化は行政側の判断ですすめたが、今度は民間が行政の事業がほしいと望めば「市場
化テスト」として官、民が対等の競争入札にもとづいて公共サービスの運営をきめることになるとのべ、しかも東京都はこの法案に先だって二〇〇六年度にモデル事業の選定と対象事業の洗い出しを始めようとしている。これが東京都で具体化されれば都民にとってもその事業に係わる職員にとってもきわめて重大な影響が出ると述べました。

すべての福祉施設を民間に放り出す!



 氏家氏は、東京都福祉保健局が「都立施設改革のさらなる展開」(二月三日)のなかで、法律で公立の直営が義務づけられている事業以外のすべての高齢者施設、児童・母子婦人施設、障害者施設、医療施設・看護専門学校等を、順次民間に移していく方向を打ち出していることをきびしく批判し都民生活に重大な影響を及ぼすこうした施策は絶対許してはならないと強調しました。
 また氏家氏は、東京都が福祉切り捨ての一方で、「統合物流ビジョン」(二月八日)で、五年、十年、二十年計画で「陸・海・空の広域物流ネットワーク」の構築を段階的にすすめようとしていることを紹介。このビジョンは、都心から副都心をつくるという鈴木都政の「マイタウン」とちがって、国際都市間競争に勝ち抜くためとして莫大な予算を投じ、都心の真ん中に六本木ヒルズのようなグローバル企業のための超高層ビルなどをどんどんつくり、周辺に圏央道、外環道などの物流ネットワークを張り巡らせようとしていると指摘。その最大の口実にオリンピック招致をあげているとのべました。

 
横田基地をめぐる危険な動き

 

 さらに氏家氏は、石原都知事の横田基地の「軍民共用」問題に言及。日米協議の「中間報告」では、在日米軍司令部は横田基地に共同統合運用調整所を設置し、それを共同使用することにより自衛隊と在日米軍の間の連接性、調整及び相互運用性が不断に確保すると謳っていることを紹介。これは、単に空自と米空軍という関係に止まらず、日米双方の陸海空軍の司令所を横田基地におき一体化させると見るべきではないかと述べました。横田基地への「軍民共用」は、単に民間の飛行機がくるとか、というだけでなく非常に重要な意味合いをもっていると指摘し、こういう意味でも石原都政を継続させることは、日本の平和、憲法にとっても大きなマイナスになると強調しました。

 
都政の転換へ
 都民的共同を


 最後に、氏家氏はこうした石原都政の根本的転換をめざす都民的共同の前進を強調し、こうした大きな都民的共同を都政の転換へつなげようと呼びかけて話を終えました。
  (見出しは編集部)
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